【前編より続き】
──人のカラダもそれぞれの形とバランスを持っている、ということなんですね。
たとえば腹筋運動するとき、腹筋が弱いので両肩を上げてしまうといった「違う筋肉を使ってがんばろうとすること」を『代償動作』といいます。
よくない意味で使われることも多く、「疲れて痛みが出るのは、代償動作をしているからだ。だからいけないんだね」とよく言われます。
でも私は、代償動作はカバーするシステムでもあると思ってるんです。このシステムがあることで、身体に不具合があっても他の部位が代わりに役割を果たそうとする。
これまでは、「代償動作をしているから、ここを直してまっすぐにしよう」と、直すことを目的としていたけど、本当にまっすぐに直すほうがいいのか?というとそうでもないだろうと。
二面的に線を引いて考えがちなんですが、カラダは三次元で立体的だから、あらゆる面でトータルに考えないといけないですよね。
──私は素人なので、姿勢はまっすぐ……背骨の曲線はあるにせよ、まっすぐのほうがいいと思ってしまいます。
基本は、そこに近づけてはいくんです。
ただ、線を引いたようにまっすぐでいいのかというと、そうでもない。
ジャマイカの短距離走のウサイン・ボルト選手がいい例です。彼は側弯症(註)なんですよね。それ矯正しようとしたら、どんどん記録が落ちて行っちゃったので、コーチ陣が本人のやり方に戻したんです。そしたら、記録が戻った。
だから、側弯症であってもそれなりの脚の振り方があるし、ボルト選手は右と左の歩幅もかなり違うんですよね。だから “まっすぐであることが正しい” と、一概には言えないのです。
──ビューティ・ペルヴィスは、そういった個々の個性・バランスのなかで、よりよい方向へと導くのですね。
そうですね。クラス中のインストラクションでも「あと3呼吸終えたら、次の動きへ」と、その人それぞれのできる範囲、やり方で、自分のペースでやっていただいきます。
その人それぞれの一番いいところに進んでいただく。インストラクターが手を叩いて「はい、はい、はい、はい」とみんなが一律に同じ動きを同じテンポでやるのとは違う。
ビューティ・ペルヴィスは、お客様が複数いる集団レッスンでありながら、個別アプローチなんです。デモンストレーションは見せず、口頭で説明するのもそのためです。自分のやり方でいいんです。よっぽど違ったら、その方のそばに行きますから(笑)。
──ビューティ・ペルヴィスは、先生たちのインストラクションがキモでもありますね。
ビューティ・ペルヴィスを教えるのは難しい!って先生方に言われます(笑)。
でも、そういったところを理解して、生徒さんたちへの指導で伝えていき「カラダがこんなに変わりました!」「ここが治ったんです!」って言われることが、指導者としての醍醐味でもあるんですよ。
(註)側弯症……通常、背骨(脊柱)は、前あるいは後ろから見た場合、ほぼまっすぐ。側弯症では背骨が横(側方)に曲がり、多くの場合脊柱自体のねじれを伴う。
【前編を読む】
2015年10月31日